これはタイミングが最高で最悪の映画になったが、クリント・イーストウッッド監督作品として後世に残る映画であることは言うまでもない。
実在した狙撃手クリス・カイルの伝記物語。
類まれな能力、責任会、愛。父親に「お前は弱い羊達を守る牧羊犬(シープドッグ)になれ、狼にはなるな」と教えられる。
9.11テロを経験し特殊部隊ネイビー・シールズでの狙撃手となり最前線で目覚ましい活躍をしていく。仲間を助け、アメリカを助ける。レジェンドとなった彼には交戦国から懸賞金までかけられている。
葛藤、家族との溝、精神的な死闘。守れない仲間などなど・・・
そんなヒーローが実在したという話だけではない。
アメリカで物議をかもしてる映画というのは、職業軍人としての生き方、戦争体験でPTSDなど苦しむ軍人としても描かれていること、そして何より彼自身がその病気に苦しみながら、同時に元軍人たちと社会復帰にむけた慈善事業をしていたこともある。そして彼はPTSDを患う元海兵隊員に射殺されるのだが。
今まさに、いわゆるイスラム国とアメリカが交戦ムードであり、そしてテロリストの暗殺、人質の虐殺と繰り返されているわけだが、米軍のヒーローになるということは、テロリストに高額の賞金首をつけられ狙われるかもしれない。
家族の為に、アメリカのためになどの平らな感情の葛藤をイーストウッドがつくるわけがない。「自分の力」「番犬だから弱い国民を守るんんだ」とふるいながら敵はなんなんだ?スコープの向こうはみんな狼なのか??と自問していく。
正直、勲章を多数持つ狙撃手というのは名誉でなければそれだけたくさんのアメリカ人を助けたというわけだ。つまり的がある。的は敵であり人なのである。
クリントイーストウッドの戦争作品は泥臭さがあり古きも残るところがあるが、映画完成前の死が脚本を書き換え、あらためて考えさせる方向に向かったのかもしれない。
アカデミー賞候補作として見ても良いが、以外にも生々しくクリントイーストウッド作品苦手な人には好印象にはならないだろう。
9.11の主犯格として戦争の正義化に見えてしまったりするのも残念ではないだろうか。
一人の男としての映画としてはよかったけども、感情移入して泣くことは決してなかったと伝えておく。目を向けたこと、タイムリーな出来事によるアカデミー候補なんじゃないかな。
[amazonjs asin=”415050427X” locale=”JP” title=”アメリカン・スナイパー (ハヤカワ文庫 NF 427)”]