Facebookに2013年3月28日に投稿したものを 再アップ。
映画について
ぶっ通し三時間。それでもあっという間でした。ラン・ローラ・ランのトム・ティクヴァ監督とアンディウォシャウスキー(弟)監督が脚本したようでリフレインさながら相互の時代を行き来するため、初見、とくに最初の30分は何が起こってるか整理ができない。しかも6つの時代、6つの話。はじめてみれば全部が同じ人物生まれ変わりと感じてしまうが、実際そうでもない。(それは本でわかる)といってもとにかくシーンチェンジが多くて時代感が似ていると混ざる。それも計算されてるようだ。なぜならそれぞれの時代の同じ時間感覚を大事にしているのだと思う。これは仮説だが、6つの話を6画面同時にみせるような感覚を作っていると思う。だからこそ2回、3回見るべき作品になっている。気が付き方、腑に落ち方が変わるだろう。
映像はそれぞれの時代作りこまれているし、SFも流石の完成度。漫画表現バンザイ。
シナリオこの映画は全体を通して6つの時代の6つの物語で人間の営み、文明について語っている。古い時代から新しい時代へ繋がるのではなく、すべてが因果となっている。善意も小さな悪意も未来になって影響を与えていく。強者と弱者の関係図。哲学的にはニーチェ「力への意志」
ネタバレ系なのでご注意
ほうき星の痣がそれぞれのカルマや因果の象徴になっている。ソミンだけクローンなので存在しないが、とある行為で付く。うまい演出だった。トムハンクスを追っかけてもわかるが、悪役から英雄と長い時間をかけて変わるものもあればエージェント・スミスことヒューゴ=ウィービングはずっと悪役や悪魔。これも、カルマを表してるのかもしれない。
クラウド・アトラスの仮説:
「セデルゲムの手紙」にてフロビシャーが作曲する六重奏がクラウド・アトラス六重奏がすべてのつながり、因果をあらわしてるようだ。ピアノ、チェロやクラリネットなど6つの楽器が完成に向けて加わり、音階や音色を自分で感じて描き上げるんだが、どうにもそれぞれの世代の主人公に重なっているようだ。曲の制作が一度大きく中断するように、各章の主人公も中断が入る。映画ならではの小気味良い展開、全体の呼吸まで計算されているのがとても良かった。6人と曲、つまり6人は同じリズムで同じことを繰り返してる。時代も人種も超えたところで!というのが全体のトーンとなる。もちろんメインのピアノは二人のラブストーリがある。皿を割りまくる妄想シーンはたまらない!ちなみにフロビシャーは結構良い言葉をたくさん残してる。「降りてこないときは無理に追いかけない。必要になれば必ず降りてくる」といった感じに。
人は生まれ変わるということを主張してるわけではない。人間・文明の因果を語るなか、善意も小さな悪行もすべてが次の世代に残って行く。強者が弱者をコントロールする序列は簡単に変わらないこともアンチテーゼになっている。これは様々な年代で同じように繰り返されていくが、選択ではなく変化を望んだものは次の扉で変わっていくんだと解く。常に次の扉が開けば新しく移り変わるともいう。
人生は望む方向にある。成功の哲学でもあろう。
そしてまた同じ事を繰り返しているという人間の醜さも説いている。特に「共食い」表現が多様されている。各世代に全部あるのが憎い。
全体は因果のように漂わせているのだが、人間は一人で生きてるのではないと説く。誰かのために生きている。それは誰?家族などのグループだけではなく、それが時代を超えて生きているという主張がある。
本について
本は19世紀半ばから2X世紀の未来まで人種も超えていく順番の物語。折り返しから逆にまた戻っていく形となっている。だれかとだれかがリンクするとか、そういうのはほとんど無い。映画ではトムハンクスが必ずでてくるのでわかるのだが・・・本はどこから読んでも良い方法になっているし、ほんの書き方もそれぞれの章で大きく変えている。一人称、日記、手紙、伝記などと口語すら違うので読み解くのにとてもつかれる。逆に言えばどこから読んでも良いようにもしてあるようだ。 常に最後、勇敢な主人公は「変化」を起こそうとする。それでも人間は同じ事を繰り返す。弱者をコントロールすることで生きようとする。いつまでもそうなのか?しかもその次代の使命、文明と戦うという。 映画作品としても小説としても難しいと思うものの映画を見慣れた人にとっても新鮮だと感じる。何度かみてみたい映画だろう。小説はとにかく難読な会話も多く、トルストイとか村上春樹とか同時に全部読み始める勇気が必要と付け加えておく。大きな謎が隠されてるとも思えなかった。(あるかもしれない)ただ人間としてそりゃ数世紀一気にみたら、もっと考えなきゃならないと感じますよね。
航海時代のアダムも最後に変化を起こす。立ち向かう。奴隷解放運動を引き起こそうと。
「お前の人生など海の1滴でしかない」と罵られても。
なぜなら「どんな海もたくさんの1滴が集まってできている」と信じて。
人生は自分で望み選ぶ航海か。なるほどね。
さらに加筆。
本は順番は関係ないと思ったが、しっかりと過去から未来への影響、そして未来から過去への影響があることを思い知る!!これはすごいな。全部つながっている。
http://wwws.warnerbros.co.jp/cloudatlas/index.html
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